鉄人、天むす！

　天むすちゃん（娘）が、交通事故にあった。
　朝、電話が鳴り、取ると天むすちゃんからやった。
『おかあさん！車に跳ねられてん！○○病院まで、来て』と、要領を得ない・・・。
　とにかく、慌てて病院まで行ったら、一緒に通学しているデキちゃんが病院の前に座り込んでた。
『あ、おばちゃん！天むすは、今、精密検査してんねけど、・・・天むすは、悪くないねん！車が路地から、一旦停車もせんと突っ込んできてん！ほんで、天むすは、ふっとんでんけど・・・あの子、すぐに立ち上がりやってん！ほんで、轢いたおっちゃんが、ココまで連れて来てんけど、車の中で、こっちが悪いみたいな事言いやんねん！』と、半泣き状態で、言うではないか！
　聞きずてならないっ！おのれぇ〜！と、思っていると、そのオヤジが、満面に笑みをたたえて、
『あ、どうもぉ〜！お母さんでっか〜！』と、やって来た。
　はっと、険しい私の顔を見て、そのオヤジは一瞬たじろいた。（大体、加害者が被害者の親みて、嬉しそうに笑うか？）
　しかし、私も大人である。ココは堪えて、話を聞こうではないか！と、病院の待合室に、オヤジを誘導した。
　デキちゃんは、私の怒りを察したのか、そそくさと、学校に向かった。

　その八百屋のオヤジ風のオヤジは、えんえんと、言い訳をした。一言も謝らずに･･･。
　そして、最後に『まぁ、たいした事にならんで、良かったですわ！うちも車にちょっと傷ついた位でしたからな、あ！それは、ヨロシイんですわ！』
　ここで、私が爆発したのは言うまでもない！

　『おのれが、一旦停止もせんと、路地から歩道に突っ込んどいて、なんちゅう言い草や！車の傷ぅ？なに、眠たいことぬかしとんじゃ！花の生娘の身体に、ど汚い車で突っ込んできやがって！先に謝るんが、筋やろ！』
と、言う意味の事を、もう少し上品な言い方で、学生時代女子一番の肺活量で、まくしたてた。

　病院は、静まり返っていた。あとは、そのオヤジの謝る声だけが、響いていた。

　しばらくすると、天むすちゃんがヘロヘロと、診察室から出てきた。鎖骨が折れたらしい。
　天むすの一番の心配事は、自転車に付けたピングーのベルが潰れた事であった。
　とにかく、完全に折れてないから、しばらく様子を見る事になった。だめなら、手術しなくてはいけないらしい。全治１ヶ月。

　それから、警察に行って事情聴取を受けた。
　車の傷や、自転車の傷からして、完全にオヤジの分が悪かった。
　おまけに、ちゃんと話を聞くと、ぶつかったのは天むすだけじゃなくて、後ろを走っていたデキちゃんも、前輪が引っかかって転んでいたらしい。
　恐いオヤジである。ふたり、まとめて亡き者にしようとは・・・・。

　相手が、女子供だったから、うまく言い包めようとしたらしいが、お天道様が見てます！

　長くなったけど、その後、止めるのも聞かず、天むすちゃんは、学校へ行った。

　あとで、自転車は廃棄処分になったと聞いた。

　最後に、路地から幹線道路まで吹っ飛ばされて、他の車に２度轢きされる恐れもあったと、いう事だけ、付け加えておこう！

　恐るべし、鉄人、天むすちゃん！